フィルムの中の桜と私
外は少し薄暗く、しかし良い感じに晴れて、夕焼けの跡をまだ少し残していた。
「あ~、やっぱ歩きづらいなぁ~」
隣の早紀は浴衣を綺麗に着飾り、足元を気にしている。隣の美由は私服だから何とも不釣り合いな二人組に映るだろう。
「も~早紀、浴衣着てくるならそう言ってよ。私だけ浮いてる感じじゃん」
「ごめんごめん。ビックリさせようと思って。」「違う意味でビックリだよ!」
「だから謝ってんじゃん。綿菓子買ってあげるから」
「仕方ないなぁ…」
歩きながら俊也の家の前を通るとき、無意識に少し足を早めてしまう。なんでだろう、今日は俊也に会いたくない。
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