フィルムの中の桜と私
やっぱり会場は人と出店で混雑していた。見かけた顔もちらほらある。狭い街だもんね。
「ほら、美由!」
着いてすぐに一発目の花火が打ち上げられた。薄暗かった街を鮮やかな色に染め上げる、壮大だけど、どこか儚げな花火だった。
「…きれい」
周りからも歓声と拍手が湧き上がる。
「ちょ~きれいだね!毎年見てるのにいつも感動する!」
早紀は手を叩いて喜んでいる。
「ホントにきれい。だから夏祭りって欠かせないよね」
美由も興奮気味で返す。「なんか買ってこようよ!」
「うん、綿菓子も忘れずにね」
「あ、そうだった…」
二人は人ごみの流れに加わる。こんな小さな街のどこからこんなに人が出てきたんだろう…と、首を捻りたくなるのも毎年のこと。
「美由~、来てたの?」
「久しぶり~!」
今の友達や、小学、中学の友達など色々な人と再開できるのもこの祭りの楽しみ。
ふと美由は人ごみの波の中に俊也の姿を見た気がした。
「今、俊也居なかった?」
早紀に聞く。
「え、私見てないよ。まあ俊也だって祭りくらい来るでしょ」
「まぁ…そだよね」
美由はその後、ついつい俊也を探してキョロキョロしてしまっていた。俊也…こういう祭りとかあんまり好きじゃないのに…。
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