フィルムの中の桜と私
あれから本当に俊也とは話さなくなった。美由はあの時の俊也の言葉が忘れられない。
「同じクラスのただの友達だよ…」
俊也にとって私はただの友達だったんだ。そうだよね、別に何もないし。早紀はあの時以来、美由に男を紹介しようと毎日誘いかける。だが美由の返事はいつも同じだった。 今は一人でいたい。何もしたくなかった。 美由は暗い泥だらけの道を歩いている気持ちだった。抜け出せない闇、足にまとわりついて重くなっていく泥。 学校に通う事が、美由は苦痛になっていく。自分が一番近い存在だったはずなのに、どうして…。
美由は俊也と公園に出掛けたあの日以来、ずっと悩んでいた進路も霧が晴れたように決まった。自分の得意な、自分の趣味の料理を生かそうと。俊也に聞いてほしかった。私もみんなの未来に少しでも彩りをつけれるような人間になるよ。また食べにこようって、みんなに楽しみを与えられるような人生を送るよ。

美由はまだ深い闇の中にいた。
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