フィルムの中の桜と私

卒業

瞬く間に時は過ぎた。4月から新生活をスタートさせる美由にはその準備で思い出を作る時間もなかった。きっとみんなもそうだろう。新しい生活に不安と期待となんとも言えない感覚がつきまとう。
卒業の日はその門出を祝うかのように澄み切った青空が広がっていた。いつもより少しお洒落して家を出た美由はわざと歩いて学校に向かう。少しでも景色を見ておきたいし、卒業式に自転車もなぁ。と昨日考えた。
教室に入ると寂しさを紛らわすためか、いつもより賑やかに感じた。やはりお洒落した早紀が話しかけてくる。
「美由~、今日で終わりなんだね。私もう泣きそう…」
「早紀、泣くのどう考えても早いよ!」
「だよね…あ、なんか友達から聞いたんだけど、俊也東京行っちゃうみたいじゃん!美由、どうするの?」
「実はね…」
早紀に今日終わったら、公園で待ち合わせしてること、その時にしっかり自分の気持ちを伝えることを話した。
早紀はとても喜んでくれた。例え離れても想いだけでも伝えなきゃ後悔する、そんな結論に達した答えだった。
「美由、頑張って!私応援してるから!」
「ありがと!」
美由は決めた。絶対伝える。ダメでもいい。じゃなきゃかっこよくないよね、俊也…。
< 22 / 31 >

この作品をシェア

pagetop