フィルムの中の桜と私
昨日までの雨が、告別式の今日はカラッと晴れ上がった。俊也の遺体が帰ってきて、位牌が飾られて美由は次第に俊也の死を感じた。でも死を受け入れても不思議と涙は出なかった。自分だけが別の世界に入り込んでしまったような、元々俊也なんて人間はいなかったんじゃなかったのか、変な感情が続いた。早紀は、連絡を受け、ずっと美由の隣を離れないでくれた。
あれから数日…。美由はさくら公園、満開の桜の木を見上げていた。俊也のお墓には俊也は居ないんだろうな。いるとしたら、絶対、ここだ。きっと向こうの世界でもカメラ片手に、風景を、人の未来に楽しみを一つ添えられるような風景にシャッターを下ろしているんだろうな。俊也、私生きるよ。俊也の分まで生きてみるよ。俊也残していってくれた大切な思い、生きて色んな人に伝えていくよ。だから私がそっちに行くまで待ってて。それで会えたら一言だけ言って。「お前、かっこよかったよ」って。俊也をガッカリさせちゃダメだよね。
桜の葉が舞い落ちて私の肩に落ちる。この花びらは俊也かな。やっぱここにいたんだ。私はカメラを構える見えない俊也にピースを作った。
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