フィルムの中の桜と私
…あれから十年。私はあれ以来忙しくて来れなかったさくら公園に休暇をもらって訪れた。
春の公園は恐ろしいくらい、あの頃と何も変わらず、大きな青空と暖かい風、満開に咲き乱れるあの桜が私を迎えてくれた。
「俊也、久しぶり。」
私は花束を桜の木の下に置こうとしてやめた。俊也にはこの桜の花があるもんね。
「俊也、私頑張って生きてるよ。心配しないでね」
桜の花が風に揺れ、私の言葉に頷いたみたい。俊也はどれだけ歳をとっても私の心の中で生きてます。私は今かっこいいですか?
その時、小学生の男の子が私に聞いてきた。
「お姉さん、この木とお話してるの?」
「そうよ、この木はね、お姉さんの宝物なの」
「そうなんだ!僕もこの木大好きなんだよ!」
ほら、俊也、伝わってる。この子の心にも色付き始めてる。明るい未来が。
「ママぁ~、何してるの? お腹すいた!早く行こうよ!」
娘が美由に駆け寄り、抱き付く。車を見ると、夫が運転席で大きなあくびをしているところだった。
「じゃ行こうか!」
美由は娘の手を取り、男の子に手を振ると、車へと歩きだした。 美由の肩には一枚の桜の花びらが乗っていた。
< 31 / 31 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

夢の翼
春一番/著

総文字数/504

詩・短歌・俳句・川柳1ページ

表紙を見る
たった一つの流れ星
春一番/著

総文字数/10,075

恋愛(その他)25ページ

表紙を見る
頑張っている君へ
春一番/著

総文字数/752

詩・短歌・俳句・川柳1ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop