【ホラコン】招かれざる同乗者
あれからおよそ一時間以上が経っていました。
普通なら、とっくに家に着いていなければならない時間です。
時速百キロ以上で一時間走れば、その走行距離は百キロ以上……Kさんの家から熱海までの距離はせいぜい、二十~三十キロ位なものです。
(なんで着かねぇんだよ!……一体、どこ走ってるんだ!)
冬だというのに、Kさんは全身汗ビッショリでした。
車の暖房を止め、なおかつエアコンを入れているのに、車内は暑くて仕方がないのです。
もう既にKさんの集中力も限界になっていました。
今にも事故を起こしそうな程のハイスピードでの運転の連続。アクセルを緩めようにも、まるで金縛りに遭ったように右足がいうことを利きませんでした。
このままでは、ハンドルを切り損ねてガードレールに激突してしまう……
そんな緊迫した状況に我慢が出来なくなったKさんは最後の力を振り絞って、とうとう後ろに座っているであろう幽霊に向かってその時初めて怒鳴り声を上げたのです。
「テメエ~~っ!
いい加減に降りやがれ~っ!金取るぞコノヤロウ~っ!」
.