1コ下のキミ
確かに木岐さんは危ない人らしい。
でも、妹に好かれてるんだ。
こんな、ムカつくこと言ったりするけど、でも心に傷を負ってて、それでも変わらず笑い続けているような、こんな奴に。
ムカつくけど、でも憎めない奴に。
すっげー好かれてる。
それって、木岐さんにあんまり関わったことのない俺だけど、木岐さんにもいいところがあるって証拠だろ。
由衣だって好いてる。
リーダーなんて親友だ。
こんなにも恐れられている木岐さんが、あんなにも周りに好かれている。
心から、好かれている。
それなのに、なぜ郁未にはいない?
――いなかった?
なんでみんな本当の郁未を見ようとしないんだ?
「……龍河くん?俯いたまま黙っちゃって、どうしたの?」
――ムカつく
「……ムカつくんだよ」
「あ……ご、ごめんなさい、嫌だった、かな――」
「お前じゃない」
郁未じゃない。
「クラスの奴ら……いっそ全校生徒だ。お前ら何なんだよ?どいつもこいつも郁未を空気にしやがって」