1コ下のキミ


屋上は風が吹いている。

強くもなく、弱くもなく。

心地いい風が、俺たちの間を通りぬける。


「あたしね、すごく嬉しいの」

「それ、展望台でも聞いた。それとも、告白がってこと?」

「違うってば。友達増えてること」

「この勢いじゃ、全校と友達になりそうだな」

「さすがにそれはないけどさ」


郁未の顔が、すごく満足している。


「嬉しすぎて、ずっと笑いっぱなしで、ちょっと顔が疲れちゃった」

「そんなに嬉しいか」

「うん、嬉しい」


――俺も、そんなお前が見れて嬉しい。

……なんて思いはしたけど、口に出す事はしなかった。


出すかよ、こんな恥ずかしいセリフ。


「あ、HR始まっちゃう時間。戻ろ!」

「あぁ」


周りを取り巻く環境が変わっても、郁未は変らない。

さすが、木岐さんの妹なんだろうな。


< 132 / 157 >

この作品をシェア

pagetop