1コ下のキミ


……確かに、覚えがある。

最初の頃は、『嬉しい』という言葉すらも口ごもりながら言っていた。

『人との会話で、感情を言葉にはしないから』

そう言っていた。


今はどうやら慣れて来たのか、『嬉しい』くらいなら俺に言う。

でもそれがもっともっと気持ちがはっきりとしている『好き』という言葉だったら……?


「そういうことかよ……」

『そう言うことだ』


なんだこの脱力感。

俺は安心してるのか。


「洸稀」

『ん?』

「俺、思ってたよりずっと郁未にハマってるみたいだ」


ベッドから出て立つ。

背伸びをすると、頭がすっきりしていた。


「仕方ねぇな。洸稀、お前にもっと面白い情報を先に教えといてやる」

『ん?なんだ?』


これは、俺の気持ちが固まったという証拠。


「俺、郁未に告白する」


言ったからには、もう後には引けない。
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