1コ下のキミ
「その、急に言われても……えっと、頭が混乱しているというか、なんというか……」
「じゃ、少し待つ」
「あの、近いというか、なんというか」
「離れないけどな」
あぁ、俯いた。
郁未は恥ずかしそうに下を向いて、状況を整理しているらしい。
そんなこと考えなくても、普通に返してくれればいいものを。
観覧車はちょうど天辺を降り始めた。
つまり、キスは天辺まで待っていたんだ。
見せ物じゃない。
「えっと……」
整理が出来たのか?
郁未が言葉を吐いてきた。
「嘘とか、冗談とかじゃない、よね?本当なんだよね……?」
「嘘とか冗談とか言って、俺の何の得になる?」
「そっか、それならいいんだけど」
よくない。
「まだ?」
「あ、うん……ごめん、ちょっと怖くなっただけ」
「怖い?嘘とか冗談とかだと思って?」
「うん」