はつあい~君と僕との恋愛定理~
「あ~もうやめた!」
その静寂を始めに破ったのは、先生の方だった。
集中が切れたのか、ぐだりと椅子に寄れ掛かって伸びている先生。
いつもの生真面目な先生からは考えられない姿勢である。
もし学生が同じことをしていたら、先生はあの嫌な笑顔で厭味を5、6個落としていくだろう。
そんな先生に少し驚いていたら、いつの間にか先生は私の隣の、小さな丸イスに座っていた。
両手にコーヒーカップを持って。
「桜井さん、コーヒー」
「あ!ありがとうございまーす」
コーヒーメーカーを買って設置してるわりには、先生はインスタントのコーヒーが好きなのだ。
私にとっては、インスタントとそうじゃないのとの違いが分からないから、どっちでも同じだが。