社会の枠
翌日の朝早くお世話になった礼状と現金を30万円置いて病院を抜け出した。救急の出入口から外に出ると、黒いクラウンが反対側の車線に停まっている。中に人影は見えないが、私を監視しているならこの車だと直感した。それを確かめる為に、わざとゆっくり歩き出しコーナーミラーで動きを確認してみた。すると車から二人の男が降りてきて100mほどの距離を保ちながら尾行してきた。私はわざと気づかないふりをしながら駅に向かう方角に歩を進めた。すると国道に出る手前の路地からハイビームで車のライトに照らされ、思わず目をそむけた。4人の男が車から降りてきて周囲をかためた。後ろと合わせて6人が前後左右から距離を詰めてくる。『どこに行く?まだ肋骨のヒビが痛むだろ?』顔をマスクで隠しているが、昨日襲われた相手に間違いない。『こう見えても仕事熱心でね。家で飼ってるカメにも餌をやらないと可哀想だしな』と言うと、男は笑って『お前んちにカメなんていなかったな。さっき畳の裏まで調べたがな』と言うと周りの男達もニヤニヤしだした。思ったよりも動きが早い。監視は間に合わなかったという事だ。私は男の背後に目をやり『お~い』と叫び、男が後ろを向いた瞬間に突き飛ばして走りだした。呆気にとられた男達が慌てて後から追ってきた。私は国道の角を右に曲がり駅を目指して走ろうと考え、スピードを落とさず曲がると男が拳銃をこちらに向けて立っていた。思わず立ちどまると追ってきた男達に捕まり、みぞおちに膝げりをうけて倒れこんだ。『だからやめた方がいいと忠告したんですよ』と拳銃を持った男が頭上から話しかけてきた。『やはりお前だったか!』と叫ぶと同時にスタンガンをあてられて失神した。
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