社会の枠
オタクはニヤニヤしながら『ヒヒッ…。やっとお許しが出たんでね。すぐに気絶しないで下さいよ』と言いながら道具箱からのこぎりを取り出した。数人の男に抑えられた私は身動き一つできない。『まずは右耳だよ』と言いつつ近寄ってきた。私は口を塞がれ叫び声も出せずにもがいたが、ノコの刃が私の耳を切り落とした。
右耳に続いて左耳も落とされ激痛に意識を失いかけると、バケツに汲んできた水を頭からかけられた。オタクはタオルを私の耳にあてガムテープで固定し『失血死されたらつまらないからね』といいながら、ペンチを出して足の爪を一枚ずつ剥がし始めた。私は身体中の痛みで意識が朦朧としながら死を覚悟した。『早く殺せ…。オタク野郎』と言いのが精一杯で痛みに我慢しきれずに失神した。その度に水をかけられたが、もうどうでもいいと思いながら目を閉じた時シャッターの方で誰かが騒いでいる。目がかすんで見えないが何か揉めてるらしい。私は再び意識を失った。
目を醒ますと再び病院のベッドの上だった。身体中に管が通され、酸素マスクが装着されている。まだ頭が朦朧としているが命が助かっという実感は得られた。医師の診断により個室のベッドに移され食事も普通食を採れる様になった。しかし、眠る度に耳を削ぎ落とされる夢にうなされて、すぐに目が醒めてしまう。幸い鼓膜の損傷がないので音は聴こえる。翌日、茂木と立花、新宿署の村田の3人が見舞いにやってきた。茂木は私の手をとり『大変な事になってしまったな…。俺も責任を感じている。許してくれ』と頭を下げた。私は黙って首を振り『私の判断でした事です。甘かったですね…』と手を握り返した。その様子をみていた村田が『一応経緯を説明しておきますね。失礼ながら彼方の携帯の微弱電波を追わせてもらってました。まぁ、監視させてもらったという事です。所が何故か荒木組の近辺から動かなくなったんで、こりゃ変だというので出入りする組員を追跡したら川崎の埋立地に監禁されていた仁科さんを見つけた次第です』私は感謝の言葉を述べて『それで荒木組はどうなりましたか?』と尋ねると『今のところ傷害と銃刀法違反の容疑で現行犯逮捕しました。現場にいなかった若頭の奈良や組長も近いうちに引っ張ります。それと…何か薬物の様なブツも押収したので、現在鑑検で調べています』私は西田の事については喋らなかった。
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