社会の枠
私は勘定を二人分払って西田と別れた。そのまま情報屋の店に向かう。店はまだ開いていないが、彼はカウンターの中で仕込みをしている最中だった。『よう』と声をかけてストゥールに腰をおろした。若菜は私の前に小ビンのビールとグラスを出して『今日はどんな?』と、ぶっきらぼうに言う。私は手酌でビールをつぎながら『ある筋からの話だが、新宿の黒粋会が中国人の組織と組んで中国エステを数ヶ所出すらしい。それだけなら記事にはならんが、どうやらその場所を何かの取引に使うつもりらしい。その何かを調べてほしい』若菜は暫く考えていたが『やってできない事はないと思いますが、スッパ抜くにはリスクが高い記事になりますよ』と、クギをさした。私は財布から20万を渡して『残りはいつもの様に情報と交換で払う』と約束して店を出た。