last~舞い散る雪の羽根~
「・・・それで、用事はそれだけか?」


敬語を使うことをやめる。


「いえ、実はもうひとつあって」


指を一本、ピン、と立ててくる。


「あなたの隣人にあいさつに行ったところ、あなたがわたしと同学年であり、なおかつ同じ高校に通うということが判明したので、それでごあいさつしたいなー、と思ったんだよ」


もう、『アイツ』のところには行ったのか。


「そういえば、いい子で可愛い子だねー、若葉ちゃん。ちょっと人見知りしてたのか、苦笑いを浮かべるだけであんまりお話ししてくれなかったけど」


そういえば、『アイツ』は初対面の人間は少し苦手だったな。


というか。


「・・・同学年であり、同じ高校に通う?」


「うんっ。わたし、今回市立雪ヶ丘高校に通うことになった花岡明莉だよ。同じクラスになれるといいね、雪村和人君っ」


しかも名前までばれてるし。


アイツ・・・後でシめておくか。


「ああ、若葉ちゃんを責めないでね。無理やりわたしが雪村君のプロフィールを聞きだしたんだからっ」


「お前、まさかストーカーか?」


おれは貞操の危機を感じつつ一歩後ずさる。


「残念ながら、ストーカーしたくなるような相手に巡り合ったことはないんだけど、同じ高校の同学年となれば、さすがに気になるじゃない。どんな性格なのかしら?どんな顔立ちなのかしら?どんな部屋に住んでいるのかしら?どんな遊びにはまっているのかしら?どんな女の子を泣かせているのかしら?」


「最後のマテ」


「あれ、彼女じゃないの?若葉ちゃん。わたし、てっきり」


「そんなわけあるか、耳年増」


「同い年だよーっ」


けっこうノリのいいヤツだな。


そこらへんは、アイツと似ているな。



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