last~舞い散る雪の羽根~
「鍵は持ったか?」


「はいっ」


朝食を終えて、ふたり一緒にアパートを出る。


おれたちが住む『雪ん子荘』は、築10年を10年ほど続けているアパートだ。


家賃の割には快適で、風呂とトイレもついている。


一瞬だけ、おれの部屋の真上の階を見る。


305号室だったか・・・。


「若葉、昨日、やけにやかましいヤツが来なかったか?」


「来ましたよ。面白いひとですよね、花岡さん」


笑顔で言う。


花岡は苦笑いを浮かべるだけだったと言っていたが、引いていたわけじゃないらしい。


「そばはどうした?」


「ふつうに茹でてきざみのりをかけて食べましたけど」


「鼻で食べたりしなかったか?」


「すみません、せんぱいのように下品に育ったわけではないので」


言うようになったじゃねぇか・・・。


半年間いじり続けて鍛えたせいか、すっかりたくましくなった。


おれたちは、日本のお笑い芸人の低レベル化について語り合いながら学校に向かった。


始まる。


新しい、日々が。


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