last~舞い散る雪の羽根~
「よー、和っち!変わり映えない顔してるねー」


背中から失礼な声をかけられる。


振り返ると、茶髪の女がいた。


井口 沙織(いぐち さおり)。


おれが心を開いて会話できる、数少ない女のひとり。


1年の時から同じクラスで、2年になってもクラスが同じなので、腐れ縁のようになっている。


コイツとはウマが合う、というより、考え方が似ている。


要するに、ひねくれ者だっていうことだ。


「おい井口、誰が変わり映えのない顔だとぅ」


「や、和っち」


平然と指をさす。


「馬鹿を言うな、おれはこの夏にとびきりの体験をして大人の階段を上ったんだぞ」


「なのしたの、沙織ちゃんに言ってみ」


「お、お前、空も明るいうちからできる話じゃないんだぞ」


「別に。あたしは下ネタ平気だし、それに、和っちがそんな色っぽい体験してるわけないし」


遠まわしに馬鹿にされている気がする・・・。


まあ、事実なんだが。


「言ってくれるじゃないか、いいか、聞いて驚け」


「さっきから聞いてる」


おれはすっと胸を張る。


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