last~舞い散る雪の羽根~
「このたび、ワタクシ雪村和人は、撞球を初体験しました」


「撞球?・・・ああ、ビリヤードのことか」


「どうだ、参ったか。だったら驚いたと言え」


「わぁ、驚いた。雪村くん、すごーい」


全然驚いちゃいなさそうな顔で言う。


「ずいぶんテンションが低いな。今日はどうした」


「や、ていうか、ビリヤードならあたし8歳のころからやってるし」


「マジで!?」


おれは思わず大声を出した。


「コイツぁ、とんだ雌猫だぜ。こんな学校にこんなブルジョワがいたとはな」


「別にビリヤードはブルジョワのゲームってわけじゃないと思うけど。そういや、駅前のアミューズメントビルにビリヤードコーナーがあったっけ。あそこ行ったんだ」


「・・・お前はエスパーか」


しかもおれが行ったビリヤード場まで見抜かれている。


「だって、和っち近場でなきゃそんなとこ行かないでしょ?」


「・・・まぁな」


完璧におれの負けだ。


「あそこだったらさ、今度放課後にでも一緒に行こうよ和っち。ビリヤード歴8年のあたしが格の違いを見せてやるから」


「いいだろう。ほえ面かいても知らんぞ」


「そのセリフ、そっくりそのまま返してやろう」


おれと井口は火花を散らす。


勝っても負けても恨みっこなしだ。


男と男の真剣勝負の約束をして、おれたちは教室に入る。



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