last~舞い散る雪の羽根~
入ってきた人物を見て、おれは驚いた。


なんと、担任の教師が女子高生に変わっているではないか。


「さあ、席につけーっ」


遅れて入ってきた男の声が教室に響き渡る。


違った。


担任はいつも通り体育教師の霊長類ヒト科、軽部 太郎(かるべ たろう)だった。


「今日は転校生を紹介する」


「花岡明莉ですっ!」


鬼軽部に紹介されてそいつは語りだした。


「趣味はピアノ、特技は生け花、好きなものはローズティー、将来の夢はお嫁さんの、清楚で可愛い女子高生ですっ」


相変わらずやかましい。


「ちなみにぜんぶ嘘ですっ」


「って嘘なのかよっ!」


気がつくと、おれは突っ込んでいた。


「あ、そこのひと、人の話は黙って聞きましょうね。人の話に割り込んでくる行為は嫌われますよ。でも、昨日の夜は楽しかったね雪村くんっ」


花岡がおれの名前を呼んだ瞬間、周囲にどよめきが走る。


「おい、なんであいつ転校生のこと知ってんだ?」


「しかも、昨日の夜って、もしかして・・・」


「あんな可愛い子と知り合いとかよぉ、雪村って殺したくなるよなぁ」


ごごごごごごごごご!←和人を取り巻くプレッシャーの音。


まずい・・・。


クラスメイトの視線が、おれの心に突き刺さる。


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