last~舞い散る雪の羽根~
「待ったか?」


「ううん、わたしは待ってないよ?」


「どうした若葉、声が変わってるぞ」


「いや、風邪なんだよ。気にしないで」


若葉の後ろに、背後霊みたいなショートカットが見える。


おれは、若葉に向けて言う。


「ずいぶん厄介な風邪だな。風邪の影響なのか、上級生にタメ口きくようになってるぞ」


「いや、それがね、わたしは生まれ変わったの。立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花、歌う姿はカーネーション、踊ればそれはエーデルワイス、走る姿は菊の季節に桜・・・」


そしてずいぶん饒舌になった。


「えーっと・・・雪村くん、あとお花ってどんなのがあったっけ?」


「黙れラフレシア」


・・・しまった!!


「いやー、声をかけてくれるとは嬉しいなー」


若葉の背後に隠れていた(つもりだったらしい)花岡が姿を現す。


くそっ、スルーしたまま学校に向かうつもりだったのに。


「おはよう、雪村くんっ」


「・・・ああ」


花岡は笑顔で、おれは仏頂面で挨拶を交わす。


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