last~舞い散る雪の羽根~
匠と駅前で別れて、おれは六畳一間のおれの国に帰宅する。


さて、家に帰ったことだし、軽い自己紹介をしておこう。


雪村 和人(ゆきむら かずと)、高校2年生。


中学までは遠く四国に住んでいたが、高校進学を機にこの街のアパートで一人暮らしを始めた。


正確には、帰ってきた、と言う方が適切だ。


おれは小学校低学年のころに、この街に住んでいた。


中3になって、進学する高校を考えなければならない時期になったとき、この街にある高校を受けたくなった。


理由は、なんとなく。


なんとなく、誰かが帰って来いと呼んでいる気がした。


そんな理由だったが、母親は快く受験を許可した。


「あの街に帰りたいのなら、帰った方がいい」


おれが進学の相談をした時の母親の言葉だ。


それからのおれは勉強をして、志望していた市立雪ヶ丘高校に受かり、おれの一人暮らしが決定した。


一人暮らしには、何かと苦労が多い。


自炊は覚えたが、はっきり言って面倒だ。


そういった日には、コンビニ弁当を食べたり、ファーストフードで食事を済ませたくなる日もある。


今日はそんな日だった。


そんな日だから、おれは駅前のアーケード街にある1個百円以下のハンバーガーを3つほど買ってきた。


3つあれば、明日の朝食まで持つだろう。


とりあえず1つの包装紙を開ける。


テレビを点けて、くだらないバラエティ番組を鑑賞しつつ貪り食う。



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