*王子様に恋をして*








『違う』




その時はそう思ってた

でも現に今俺の目の前にはその、転んで泣いていた女の子がいて
そしてその子を次は自分の手で泣かしている


「まいちゃん」


呼ぶとびくりと揺らす体にあーあって思う
俺のせい、だろう

俺の様子を伺うようにそっと見てくる瞳(め)に苦笑しかできない


怒ってるわけじゃないよ、って意味をこめて体を引き寄せる
そうしたら涙を止めてくれるから

図書館のときはそうだった


あたふたと俺の腕の中で焦るその子


「センパイっ?」


とてもいとおしい女の子






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