女番長


役所への道中、あたしは一言もしゃべれずにいた。

ただ、龍の手の温もりを感じながら、あたしは歩いた。



役所に到着して、龍あたしに…
「本間に、いいんやんな?」
って聞いた。


あたしが龍をまっすぐ見て大きく頷いた時、

「次の方どうぞ。」

と、職員の人に呼ばれた。


そっと窓口に行くと、
「今日は、どういったご用件でしょうか?」
と、職員の人が笑顔であたし達を迎える。


ああ、多分この人は、今あたし達がどんな気持ちでここに立ってるのか、知らんのやろうな…って思いながら、あたしは職員の人の顔を見てた。


「あの、今日は婚姻届を貰いに来たんですけど…。」


龍が言うと、職員の人はさっきにも増して笑顔になって、
「かしこまりました。少々お待ちください。」
と言って、奥の方へと消えていった。」



< 189 / 192 >

この作品をシェア

pagetop