女番長
役所への道中、あたしは一言もしゃべれずにいた。
ただ、龍の手の温もりを感じながら、あたしは歩いた。
役所に到着して、龍あたしに…
「本間に、いいんやんな?」
って聞いた。
あたしが龍をまっすぐ見て大きく頷いた時、
「次の方どうぞ。」
と、職員の人に呼ばれた。
そっと窓口に行くと、
「今日は、どういったご用件でしょうか?」
と、職員の人が笑顔であたし達を迎える。
ああ、多分この人は、今あたし達がどんな気持ちでここに立ってるのか、知らんのやろうな…って思いながら、あたしは職員の人の顔を見てた。
「あの、今日は婚姻届を貰いに来たんですけど…。」
龍が言うと、職員の人はさっきにも増して笑顔になって、
「かしこまりました。少々お待ちください。」
と言って、奥の方へと消えていった。」