うさ☆びっち
prologue

いつから此処にいるっけ?
もう覚えてないくらい此処にいる気がする。

って、当たり前か。
何せ死刑囚なんだから。

俺が元マフィアのボスだからか知らねーけど、相部屋の筈なのに此処に同居人が来た事はない。
収監されてまで何かをやらかす気はねーってのに。


「なんでなんでなんでなんでーっ!」
[静かにしろ]
「やだやだやだっ!俺何にも悪いことしてないもんっ!」
[何もなければこんな所には入らない]
「やだぁっ!やあぁああああーっ!」


・・・うるさい。

囚人が脱獄しないようにと作られた分厚いドアを突き抜けてはっきりと聞こえる声。
この収監所が出来てから此処にいるが、こんなに五月蠅い囚人は初めてだ。
そう思いながら、あまりの五月蠅さにイライラしかねない自分を抑える為に、その場にあった趣味の車の雑誌を開いて記載されている写真を眺める。

すると、俺が収監されて以来開いた事のない分厚いドアが、重い音を立てて開かれた。


「やだやだやだやだっ!」
[本日、8月26日から3年間の服役だ]
「やだぁああっ!出してっ!出してーっ!」
[時間厳守だ。以上]
「やあぁああああああああーっ!」


・・・マジかよ。
初めての同居人がこんな五月蠅い奴だとは思ってもみなかった。
奴は何が嫌なのかドアに縋り付いて泣いている。

たかが3年。
3年間タダ飯食えるなら、そんなに良い事はない。
俺なんて、一生このハコから出ることは出来ないってのに。

まぁ、そんな言葉を掛けてやる義理もねーけど。


「うぁ・・・あああぁあああああーっ!やだやだやだぁっ!やあぁああああーっ!」


・・・うるさい。

外にいただけで五月蠅かった声が耳にダイレクトに響く。
イライラしそうになる自分を抑えるのにこっちも必死だよ。


「あああぁあああああーっ!やあぁああああああーっ!」


あぁああああうるさい!
取り敢えず今すぐ黙ってくれないかな!




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