一男三女物語
高柳署に着くと宗一郎はソファーに何ごともなかったかのように座っていた。

「宗一郎……大丈夫?怖かったでしょう?」

「うん!でも、あのおじさんがすぐ助けてくれたんだ」

宗一郎が指差した方向には田辺刑事が立っていた。
田辺刑事は真紀の姿を見ると真紀の方へ歩いてきた。

「お世話になりました。」

真紀は深々と頭をさげた。

「いいえ、この間の空巣のことがありまして、たまたま現場を通りましてね」

「なぜ宗一郎が?」

「それが、犯人を取り逃がしてしまいまして、面目ないです。」

「いいえ!宗一郎が助かっただけで…」

「今、車のナンバーから車の所有者を割り出しています。」

そこへ別の刑事がやってきて…

「車は盗難車でした。昨日、盗難届けが出ていました。」

そう言って去っていった。田辺は、いかにも盗難車であることを知っていたかのように無表情だった。

「すみません!盗難車でした。それから、空巣、誘拐未遂…犯人に何か心当たりはないですか?どんなささいなことでもかまいませんので?」

「それが昨夜、父が帰る予定になっていたんですが、行方不明なんです。」
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