一男三女物語

権力

翌日、五郎は高柳署に出頭した。拉致されて解放されるまでのことをこと細かく聞かれた。

「でも、無事に帰ってこれてよかったよ！」

五郎はしみじみと田辺に言った。

「本当ですね！ただ簡単に解放した理由も、犯人が殺されたことも疑問なんです。」

「私はその件に関しては松川大臣筋だと確信しているが何もしないよ！警察に任せるよ！」

「それが、上からお達しで誘拐事件以外は、捜査打ち切りになってしまいました。誘拐事件も犯人が死んでしまって捜査は困難です。」

「やっぱりそうなるんだなぁ…悔しいがしょうがない家族を危険な目に合わせるわけにはいかないからなぁ」

「申し訳ありません！力不足で！」

「しょうがないさぁ！警察官も役人だよ！権力にたいしては、無力ということだよ！」

田辺は何も言い返せなかった。