子羊ちゃんのユウウツ
胸に抱えるのは、お弁当。
試合の後でお腹がすくだろうって思って作ってきたんだ。
さすがに、20人以上いる部員全員の分は無理だから、
りゅーじくんの分だけ。
二人でどこかで食べるつもりだった。
りゅーじくんがタオルで汗をふきながら、あたしを見た。
その瞳が鋭く胸に刺さる。
「あ、あの…お弁当作ってきたの」
それでもあたしは、
自分を奮い立たせて、お弁当を差し出した。
「おう、みんな! めーがお弁当作ってきてくれたって」
りゅーじくんが受け取ってくれて、ホッとしたのもつかの間。
りゅーじくんはフタを開けながら、周りの部員に言った。
「え、ちょっと…」
慌てて止めようとしたけど、
お弁当はあっという間に、顔を輝かせる部員たちの胃袋の中へと消えた。