子羊ちゃんのユウウツ
一人、ひとつのおかず。
多くの手がむらがって、
もともと一人前のつもりで作ったお弁当は、ホントに一瞬で消えた。
あたしは空になったお弁当箱を、
呆然と見た。
りゅーじくんに食べてほしくて、
がんばって自分で作ったのに、
…彼はひとつも食べなかった。
でも、おかず一つ食べれるかどうかだったにも関わらず、
食べた部員がうれしそうに「ごちそうさんです!」って言ってくれたから、
まだ救いだった。
そんなあたしの気持ちにりゅーじくんが追い打ちをかける。
「よかっただろ? 矢治に食べてもらえて」
その言葉で初めて、
矢治くんもあたしのお弁当を食べたことに気づいた。
でも、それは、ちっとも嬉しくなくて。
あたしは必死に涙をこらえた。