しちがつなのか

あたしはもともとひとりでいることが多かったし、誰かに話しかけられても、気の利いた返事ひとつできないし、愛想のいい表情もつくれない。

友達を欲しいとは思えないし、誰かと関わることは煩わしいと思っている。

ゴールデンウイークの明けた頃には、クラスの中でひとり浮いた状態は出来上がっていた。

だからといって、苦に思うことはないし、気楽でいいと思っていた。ずっとこのままでもいいと、本当に思っていた。


たん、たん、たん、


階段を上る音が鈍く響く。手すりはひんやりとしていて、あたしの手を少しだけ汚す。


たん、たん、たん、


ここは、やっぱり誰かが密かに使っている場所なのだろうか?

それとも、卒業生の仲間内での溜まり場とか?

ただ単に、偶然見つけたから、その時だけちょこっとこの場所を使っただけとか?

いくつかそんな考えを巡らせた頃、やっと一番上まであと数段になった。

まだ少し冷たい春の風が、地上から校舎の壁をなでて、あたしをもなでていった。
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