しちがつなのか
彼は無表情だ。
そのせいだろうか、作り物めいたような冷たさが漂っている。
何か続く言葉があるのかと待ってみた。
だが、何も返ってはこない。
ただただ沈黙だけが続き、3分は経っただろうという頃、あたしはすでに我慢が限界点に達した。
「あのさあ」
ひとこと何か言ってやろうとした、その時。
「レーナ・ウェントワース・アーリ・ブルーム」
彼が放った言葉は、不思議な響きがした。
まるで、なにかの呪文のような。
なぜか、それは、あたしの中に強く刻みこまれた。
今の言葉は何だったのか訪ねようとした時、青年はあたしに背を向けて階段を上り始めていた。
そのまま見ていると、青年はもとの場所に座ってまた本を広げたのだ。
あたしは唖然とするしかなかった。
なんてマイペースな人間なんだ、と。