向日葵《短編》
リビングのドアを開けると、夕飯の匂いが部屋中に広がっていた。
今日の夕飯は天ぷらみたいだ。
母さんが油と戦っている。
俺は母さんにただいまと言い、リビングにあるソファーに腰を下ろした。
『お兄ちゃん、今始まったばかりだよ!』
隣には、妹の茜がテレビに集中していた。
何故こんなにも集中しているのかというと、俺と茜が大好きなサッカーの試合が生放送でテレビに映っているからだ。
日本のサッカーチームの選手に憧れて中学でサッカーを始めた俺は、スポーツカバンを床に置き、今始まったばかりのサッカーの試合に没頭した。
『ご飯出来たわよ?』
母さんの発言に、俺は耳を傾けることなく、テレビに吸い込まれていた。
『おい、葵、テレビは後にしな。録画してあるんだから』
父さんの発言にも母さんと同様に、聞き流していた。