向日葵《短編》
『なんか変な噂聞いてさ。お前と中村先輩が仲がいいって』
俺はちらっと唯を見て、すぐに視線を逸らした。唯を見ていると苦しいから…
『よく話しかけられるの。中村先輩と話してると楽しいんだよね!』
唯のあどけない笑顔を見ていたら、胸がきゅんと痛くなる。
俺は唇をぎゅっと噛み締めた。
『…あんま仲良くすんなよ…』
小さな声で言った、俺の些細な願い。
そんな願いは、風の音でかき消されてしまった。
『ん?なんか言った?』
『何にもねぇよ。俺、帰る』
俺は唯の頭をくしゃっと触り、自分の教室に戻って行った。
…なぜかな?
なんで、素直に言えないのかな……
きっと怖いんだ。
幼なじみという壁を越えることが…怖いんだ。