向日葵《短編》
『それでさ…』
まだ暖かい季節なのに、俺に向かって吹いてくる風は、信じられないくらい冷たい。
『…先輩は唯が好きですか?』
俺は一旦動きを止め、先輩を見つめた。
先輩の顔がみるみるうちに赤くなっていく。
そしてはにかんだ笑顔を見せて『うん』と言った。
『葵は唯ちゃんと仲良いよな?もしかして…つき…』
先輩が言いかけた途中で俺はこう言った。
強がった言葉を──…
『付き合ってませんよ?あいつとは幼なじみなんで。安心してくださいよ。俺のことは無視してくれていいですから』
強がった言葉は、俺の胸に突き刺さったまま抜けようとしない。
なんで素直に言えないのだろう…
『唯は渡さない』って。『俺も唯が好きだ』って。
…なんでだろう…
空にぽつんと浮かぶ黄色い月が、余計に俺の存在を虚しくさせた…