向日葵《短編》
簡単なはずなのに、なんで詰まってしまうのだろう。
冗談なら簡単に言えるのに──…なぜ?
なぜ『好きだ』と言えないのかな…
俺は消えていく夕日に背を向けて、下を向きながら先輩から離れていった。
体育館の前を通ると、体操服に身を包んだ唯が俺の前に姿を現した。
『葵!今終わったの?私も今終わったから一緒に帰ろ!』
額の汗がキラキラと輝いていた。
唯はバスケ部で、レギュラー入りをしている。
俺はよくバスケ部の大会を見に行ったりもする。
違う、これは口実。
ただ唯を見たいだけ。
『一緒に帰ろ。俺部室行ってくるから、校門の前で待ってる』
『うん!分かった!』
唯はこう言って、一目散に帰る支度をしに行った。
俺も部室へと行き、スポーツカバンを持って、約束の場所の校門に向かう。
……先輩?