向日葵《短編》
俺の視界に飛び込んできた光景は、中村先輩と楽しそうに話す唯の姿だった。
先輩の気持ちが蘇る。
先輩は唯が好きなんだ…仕方ないじゃん…
唯は可愛いし…優しいし…
まるでその光景を認めるような言葉たち。
まるで…俺の負けだと言っているようだ。
俺は視線を足元のアスファルトに落とし、唯が俺に気付くのを待った。
だが、唯は一向に俺の存在に気づいてはくれない。
唯?俺はここだよ??
心の中で叫んでも、当然唯には聞こえていない。
もし、俺に勇気があったら、今すぐにでも唯の手を引っ張って、先輩との距離を離すのに─…
臆病者の俺には当然出来ないこと。
でも、俺は唯の名前を呼んだ。
見つけて欲しくて…俺を…
『唯!!』
『あっ葵!遅いよ~』
唯はいつもと変わらない笑顔で俺を見てくれた。そして先輩と目が合ってしまった。