向日葵《短編》
『なんかいつものお兄ちゃんじゃないみたい!頑張ってよ!応援するからさ』
『さんきゅ…』
茜はクッションを床に置き、俺の部屋から出て行った。
『唯…』
唯と俺は隣に住んでいて、毎日隣にいて…
一番近くにいるのに…
キミは──…遠い。
ベランダからキミの名前を呼べば、きっと届くはずだ。
でも──…俺の心の声は…
キミには─…届かない。
俺はそんな不安さを押し殺して、眠りについた。
朝、目が覚め、カーテンを開けると、空には太陽ではなく雨雲が覆っていた。
今日は生憎の雨。
俺は雨が嫌いじゃない。
だって、唯が嫌いなモノだから。
唯は必ずといって雨の日は憂鬱な顔を浮かべる。
まるで何かに怯えているようだ。
『なんで嫌いなの?』と聞くと、『雷が嫌いなの』と言われた。
俺はすぐこの言葉は嘘だとわかった。