向日葵《短編》
朝食を食べ、傘を持ち、家から飛び出した。
空を見上げると相変わらず雨雲は黒さを増すばかり。
いつでも雨が降ってもおかしくない状態だ。
『雨、降らないで…』
俺は小さな声で願い事をした。
『葵?』
しばらく空を見上げていると、唯が俺の名前を呼ぶ声が聞こえた。
俺はとっさに横を見る。
そこにはやはり暗い表情を見せた唯が立っていた。
『おはよ、唯』
『おはよう、葵』
唯は笑顔を見せてくれるが、いつもより眩しくない。
やっぱりこの空が原因か?
『雨降らないといいな』
『そうだね…』
俺はもう一度唯の顔を見て、学校へ行く道を歩いて行った。
…俺は自惚れていたのかもしれない。
唯のことを一番分かっているのは、この俺だと。
…自惚れ…だったのかな…