向日葵《短編》
時計の針は、5時過ぎを指していた。
俺と唯と麻由は、教室を後にし、帰ることにした。
『麻由は家どっちなの?』
『あっち、あっち!』
麻由が指さした方向は、俺達の家がある方向と真逆だった。
『本当は麻由を送りたいけど、唯の体調が悪いみたいだから…今日は麻由を送ってあげれない…ごめんな?』
俺は申し訳なさそうな顔を麻由に見せた。
麻由も納得してくれたようで、『また今度ね』と言って、一人、帰って行った。
唯は黙ったままで、俺はただ唯の歩幅に合わせるだけ。
傘に降り注ぐ雨が、唯の表情を更に暗くする。
『大丈夫か?』
『うん…大丈夫だよ…』
唯は俺を見上げ、無理矢理作った笑顔を見せた。
『無理…すんなよ?』
もし、俺が中村先輩だったら、唯は喜ぶかな?
もし、俺が言った言葉を中村先輩が言ったら、
唯は安心するかな?