向日葵《短編》
ぎっしりと並ぶ住宅。
俺はこの街で生まれて、この街で唯に出会って…唯に恋をして…
この街は、唯との思い出が強すぎる。
次第に涙がこみ上げてくる。
俺は垂らさないように上を向いた。
『…唯、俺はお前が好きだ…』
眩しく輝く太陽になら、気持ちを伝えることが出来るのに…
唯、本人には言えない。
つくづく、無力な自分。
『消してよ…この想い…』
俺は心臓に手を当てて、太陽に命令をした。
太陽は俺の命令を無視して、輝きを増す。
頬を伝う涙。
透明な涙が、屋上に溜まっていた水たまりと混ざり合った。
…俺は自分の素直な気持ちを、無理矢理消したんだ。
もう一度街を見下ろすと、俺は見てしまったんだ。
中村先輩と仲良く歩いている唯の姿を…
『俺は…ここだよ…?』