向日葵《短編》
唯の存在を、麻由で埋めようとして…
麻由の気持ちを踏みにじって…
麻由を利用して…
俺って自分のことで精一杯な人間なんじゃないのか?ってつくづく思う。
でも他に方法が見つからない。
『麻由…?』
ゆっくりと古びたドアを開ける俺。
美術室を覗くと、教室には麻由の姿しか見当たらなかった。
『あ、葵君!』
麻由は筆を持つ手を止め、俺の方に振り返った。
『麻由、一人?』
『うん。みんな今日は来ないみたいなの』
『そっか』
俺は麻由の隣に座り、机に体を伏せた。
『何かあったの?』
麻由は手を動かし、真っ白な大きな紙に色をつけていく。
『ん─…別に…』
『葵君が元気ないと私まで元気なくなるよ』
『ごめんね…?』
麻由は優しい。
唯と同じぐらい優しい。
でも、何故唯を越えられないのかな?