向日葵《短編》
中村先輩とは一言も会話をせずに部室を出て行った。
いつものように一人で帰ろうとしたら、校門の前に、キミの姿があった。
キミの癖なのか、髪の毛の毛先を触りながら、門にもたれ掛かって、誰かを待っている様子だった。
待ってるのは俺なんかじゃないよな、と思い、唯の前を素通りしていこうとした瞬間、唯が俺の腕を強く握った。
『は?』
突然すぎて声が裏返ってしまう。
唯は鋭い視線で俺を睨みつけた。
唯は、怒っているに違いない。
唯はあまり怒らない。
唯になんかしたっけ?
『何だよ…?』
『何で?』
『は?何が?』
唯の言っていることがいまいちつかめない。
『何で麻由の告白断ったの?』
蝉はこんな時間でも鳴くのをやめない。
俺の額からじわじわと冷や汗が浮き出てくる。
逃げられない状態だった。