向日葵《短編》
生ぬるい風が俺の髪の毛を靡かせていく。
『葵は何か勘違いしてるみたいだけど、俺、唯ちゃんとなにもないよ』
先輩は笑いながらこう言った。
俺はなにがなんだか分からず、ただ先輩の顔を見つめていた。
『え…』
『ふられたんだ。ずっと前にね』
初めて知った事実。
俺はてっきり先輩と唯は付き合っているのだと思っていた。
でも先輩は確かにこう言った。
『ふられた』って。
じゃあ、今までのことは全て勘違い?
『葵は何か勘違いしてたみたいだな。安心しろって。何もねぇから』
先輩は俺の肩をぽんぽんと二回叩き、グラウンドに戻っていった。
一人残された俺。
俺はただ呆然と立ち尽くしたままだった…
またあの感情が芽生えだす。
…俺はまだ唯が好き。
絶交しても、唯を見つめる癖は直らなかった。
俺はまだ唯が好きなんだ…