向日葵《短編》
乱れた息を整えて、ゆっくりとキミを見つめた。
キミは驚きを隠せなかったのか、俺のことを変なものを見るような目で見つめ、小さく口を開いた。
『…─誰?』
透き通るくらい綺麗なキミの声は、俺の中をぐるぐると廻っていく。
もう完全に恋に堕ちていた─…
『俺、今村葵!隣の家に住んでるんだ!』
俺は自分の家を指差しながら、キミに笑顔を向けた。
キミは相変わらず無表情で俺を見る。
『…あたし…菊地唯…』
唯…?
それはキミの名前?
『唯?唯っていうの?』
俺が確認をするとキミは小さく頷き、ウサギのぬいぐるみをぎゅっと握りしめて、小さく微笑んだ。
『葵…?』
『おう!よろしくな!唯』
俺は小さな手を差し出すと、唯は恐る恐るだが、俺の手を握ってくれた…
この日から、俺は唯しか見えなくなったんだ─…