秘密の花園
「暑い…」
「我慢しろ。それくらい」
我慢しろって…真夏に秋冬物の毛糸のワンピースを着させられてるこっちの身にもなってよ。
いくらエアコンが効いてるからって、いくらなんでも暑い。
無駄にでかいガラス窓のせいで日差しもきつい。
うーとかあーとか唸っていると、サタンの手にハサミが握られているのが見えた。
準備万端。さしずめ私はまな板の上の鯉なのね。
「ホントに切るの?」
「ったりめーだろ。安心しろそんなに切らねーよ」
安心しろって言われても全然信用できないわ!!日頃の行いが悪いんじゃないの?
私はおずおずと申し出た。
「…お願いがあるんだけど…」
「あ?」
今まさにハサミを入れようとしたところでサタンの手が止まる。
「あのさ…前髪はいじらないで?」
「なんでだ?」
理由を問われてかあっと顔が熱くなる。
私は自分でも気持ち悪いと思うくらいに、もごもごと答えた。
「み…水瀬さんが切ってくれたから」
「そーかよ」
止まっていたサタンの手が動いた。シャキシャキと音が鳴る。