秘密の花園
人生で最高の日
水瀬さんから離れろ。このぶりぶりぶりっ子おんな。早く離れないと愛の名の下にメイク落としでスッピンをさらしてやるぞ。それとも髪の毛をワシャワシャにしておでこをさらす刑にしてやろうか。
「じゃあ、絶対ですからね?」
更衣室の扉を半開きにしてやつに向かって負のオーラを10回ほど飛ばしたところで、ようやく嵐子が水瀬さんの腕から離れた。
嵐子は水瀬さんに妙な流し目を送ると、この更衣室へとやってきた。
ご丁寧に私の隣を通り過ぎる時、ふふんと鼻を鳴らしていきやがった。
けっ。嫌な女だぜ。あーやだやだ。これだからオシャレ星人って!!
どうせ世界は自分を中心に回ってるって勘違いしてんでしょ?
この場にあれば塩をまいているところだ。
そんな嵐子と同じ空間にいるのも癪なので、トイレで着替えようと思い立ち、私は自分の荷物のみを高速で引っ張り出して、素早く更衣室から姿を消した。
もちろんきっちり扉を閉めた後であっかんべーをするのも忘れない。
「あれ?まだ着替えてないの?」
あずなさんがそんな私に気がついて声を掛けてくる。
「まあ…。はい…」
あっかんべーしていたのを誤魔化すようにポリポリと頭をかくとふわりと真新しい茶色の髪が揺れた。
その様子を見てふふふとあずなさんが笑う。