秘密の花園
「よかったな、水瀬。嵐子ちゃんの番号とアドレスゲットじゃん!!」
ん?水瀬さん?
「水瀬」という単語に敏感に反応して、着替えの手を止める。
声の主はどうやらトイレの扉の向こうにいるようだ。
おもわず耳を扉にあてる。
水瀬さんは先輩らしき男に向かってはあっとため息をついていた。
「もらっても困りますよ」
「なんでだよー。嵐子ちゃん可愛いじゃん」
「可愛いとか可愛くないとかそういう問題じゃありませんよ。そんなに欲しいならあげますよ。ハイ」
話から察するに要するに嵐子は水瀬さんに携帯の番号を書いた紙を渡していたようだ。
ぐっと拳を握りしめる。
嵐子の野郎…。いつの間に!!
さっきの小馬鹿にしたような笑いはこのことだったのかー!!
とことん腹黒い女だ。そんなに黒かったらさぞ生きてて楽しいだろうな!!
でもざまあみやがれ!!
水瀬さんはあんたなんか相手にしないからな。
その証拠にあんたの番号は他の男の手の中。
くっくっくと嵐子に負けないくらい黒い笑いが溢れてくる。
安心した私は再び、服に手をかけた。
2人はここに私がいることなど気がつかずに更に会話を続けている。