秘密の花園




「そんなこと言って~!!返して欲しいって言っても知らないからな~」


「絶対ないです」


「まったまた~」


「しつこいですよ。大体、俺が結婚してるの知ってるでしょう?」


へ…?


「バーカ。ちょっとからかっただけだろ~。怒るなよ~」


ちょっと待って…。


「そんな冗談言ってる暇があったら早く片付けましょう。佐田さんに怒られますよ」


どういうことなの?


「…そうだな」


ははっと笑っている2人の話し声が遠くなっていく。


今、自分が聞いたことが信じられなかった。


地面の感覚がなくなってその場に崩れ落ちる。


ともすれば悲鳴を上げてしまいそうな口を震える手で押さえつける。


結婚って…。水瀬さんが?


う…嘘でしょ?


どうか嘘であって欲しい。


願望のようなその問に答えてくれる人は誰もいなかった。


私…知らなかった…。そんなこと知らなかった…。


だって、水瀬さんは優しくて温かくて…。


私にだって親切にしてくれたもん。


私…知らなかった…。






…知りたくもなかった。




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