秘密の花園
人生で最悪の日
たとえばこれが花園の中の出来事ならば。
電源ボタンを押すだけで全てリセットできるのに。
さっきまで浮かれた気分でいたことも。
…水瀬さんに出逢って、恋したことも。
それともこれは罰なの?
ずっと花園の奥にいて、キチンと現実に向き合ってこなかったから?
それからどれくらいの時間が経ったのだろうか。
突如コンコンと扉がノックされる。
「理香ちゃん、いるの?」
あずなさん…?
ぼんやりとする頭を軽く振って、壁に張り付くようにしてトイレの扉を開ける。
「あずなさん…」
「どうしたの?顔色悪いよ?具合悪いの?」
私は俯きながら首を横に振った。
…違う。
心配そうに私の顔を覗きこむあずなさんを見て、私は一層惨めな気持ちになった。
同じ女なのに…。
あずなさんは女の人らしい柔らかな雰囲気に、可愛らしい服装がすっごく似合ってて。
それに比べたら私はなんてみすぼらしいんだろう。
こんな格好したって水瀬さんに近づけるわけないのに。
…恥ずかしい。
思い上がりも甚だしい。
私なんかが水瀬さんに手が届くわけないじゃん。
夢ばっか見てバカみたい…。