秘密の花園




「ごめんね。僕って昔から本を読むこと以外はてんで駄目で」


「そんな感じですよねー」


クスリと笑みがもれる。店長が四苦八苦しているのが目に浮かぶ。


「元気になったみたいだね。良かった」


店長は屈託のない笑みを浮かべて次にこう言った。


「喉はイガイガで咳はゼイゼイで熱はアツアツで鼻はズルズルだって聞いてたから、どんな奇病にかかったのかと思って心配してたんだよー」


「あは、はは、ははは!!」


後ろめたいのを隠すように、全力で笑い飛ばす。


すいません。それ嘘です。


モグラになるためにどうしてもバイトを休みたくてついた嘘です。


そんな適当な嘘を信用している店長をみたらもう嘘をつくのはやめようと心底思った。


「じゃあよろしくね」


「は~い」


壊れかけのレジスターを私に預け、店長は棚にはたきをかけ始める。


パタパタとリズムよく、はたきを動かしていたかと思うとしばらくしてから、あっと、なにごとか思い出したように声を上げた。





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